カリカリの鉄塔

逃げ切れない

3年越しで仕事を辞めた。

大学を卒業してから約7年間働いていた会社を辞めた。

辞めた理由は色々ある。会社への不満や、同僚への不満や、そこで働く自分への不満。

3年ほど前に一度転職しようとしたことがあった。その時は二十代という若さ以外一切武器を持っておらず、もちろん何の成果も得られなかった。

というより、辞めたいという気持ちよりも転職活動が面倒だという気持ちの方が強かった。つまり、今回はそれらの感情が逆転したから転職できたわけだ。

はてなブログを使っている人はみんなクリエイティブな仕事をしている方ばかりで、退職・転職エントリーを見てもまるで別世界のことのようだった。つまり、全く参考にはならなかった。

そもそも学生時代に努力や競争といったものから逃げ続け、ちっぽけな自尊心を守ろうとした結果、無い内定で卒業するはめになり、そのまま親のプレッシャーに負け地元の工場で契約社員になったような人間だ。

なんのスキルもなく、ただただ歳をとっただけの、まともな社会人として持っていて当然の常識すらもっていないような人間だ。そのままの自分で仕事が見つかると思っていたお気楽な3年前の自分が恥ずかしい。


再度転職を考えだしたのは、去年の年末ごろだった。

9月の人事異動で尊敬していた上司が異動してしまい、新しくきた上司とうまくやれるように毎日気を揉んでいたが、ある日ふと、このままここで働いていてもこれ以上待遇が良くなることはないな、と気付いた。

その瞬間、働く気力がぷつりと切れた。

一度目の転職チャンスで、今の自分ではどうしようもないことに薄々気付いてはいた。ただ、それを受け入れることができていなかった。

その時よりも3つ歳を取り、わたしは30歳だった。

何のスキルもない、工場で契約社員をしていた30歳の女を、コロナ不況と言われている今、雇う人間がいるのだろうか。答えは明確だった。

とりあえず何か資格を取ろうと資格スクールをいくつか調べ、迷った挙句簿記の資格をとることにした。

色々と調べてみると、簿記の資格をもっていれば未経験でも雇ってもらえることもあるらしい、という情報を得たのだ。

某通信教育を申し込み、11月から簿記の勉強を始めた。2月の本試験で3級に合格し、4月末にネット試験を受けて2級に合格した。

3級を勉強していたころはゆっくり勉強すれば良い、と思っていたが、3月末ごろに職場の環境が大きく変わったことで一分一秒でも早く仕事を辞めたいという気持ちが強くなり、必死に2級の勉強をした。

そのころは、平日は、職場についてから始業開始までの30分と昼休み30分、家に帰ってから2時間の合計3時間、予定のない休日は朝から夕方にかけて5〜6時間ほど勉強していたような気がする。

4月末に2級を取り、5月頭に転職エージェントに登録。5月半ばに採用が決まった。

元の職場にはすぐに退職することを伝えて、大量に余っていた有給を消化し、退職となった。


前の職場にも、もちろん良かった点はある。

親会社の素晴らしい福利厚生の恩恵を受けられることや、ほとんど頭を使わずに機械的に作業しているだけで1日が終わること、自宅から30分程度で通えること。

ただ、淀んだ空気の中で煮詰まった人間関係も、なんの変化も、進歩もない日々を過ごすことも、30歳になったわたしには息苦しかった。

この会社でこのまま働いて、歳をとって、自分はどうなるのだろう、と考えることが恐ろしかった。


新しい職場は、前の会社のような素晴らしい福利厚生もなければ、とりあえず会社にさえいけばお給料がもらえるようなぬるさもない。お給料だって決して良くはない。

ただ、わたしは自分を生温い泥沼に沈めたままにできなかった。

新しい場所がどんなところがは、まだわからない。

ぼろぼろになって、疲れ果ててしまうかもしれない。

転職なんて、みんなが当たり前にやっていることで、それは全くすごいことでも、えらいことでも、特別なことでもないことは分かっている。

それでも、自分の脚で立とうとした自分を、わたしだけは頑張ったとほめてあげたい。

これからのわたしに、エールを送る。